長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

古典的名作の映画化…さすがです。

羊と鋼の森』『キングダム』に主演した山﨑賢人さん、

NHKの朝ドラのヒロイン清原果那さん主演の

映画『夏への扉ーキミのいる未来へー』を観ました。

本当に良い映画でした。いや、良い話でした。

 

彼はいつまでたっても、ドアというドアを試せば、

そのどれか一つは必ず夏に通じるという確信を棄てようとはしないんだ

 

原作は、SF好きなら誰でもが知っている古典的名作です。

作者は、ロバート・A・ハインラインです。

自分も、記憶が不確かですが、

中学生の頃に不朽の名作SF映画2001年宇宙の旅』を観て、

高校生までには、アーサー・C・クラークの原作を読みました。

その後で、クラークと並び評されるハインラインを知って、

夏への扉』を読んだと思います。

でも、正直、話の顛末を忘れていましたが、映画の途中で思い出しました。

 

 諦めなければ、失敗じゃない

 

 SF映画の名作、シュワちゃん主演のあの映画やあのシーンをオマージュした

場面もありましたが、実はどちらも話のネタ元は、むしろ『夏への扉』です。

なにせ、執筆が1957年です。翌年の1958年に日本でも翻訳されました。

1958年は、昭和33年で。東京タワーができた年で、長嶋茂雄さんがジャイアン

に入団し、アメリカが初めて人工衛星の打ち上げに成功した年でもあります。

 

人間の心にある“善の芽”と“悪い芽”

貫井徳郎さんの小説『悪い芽』を読みました。

 

日本最大のコンベンションセンターである東京グランドアリーナでは、

アニメコンベンション、通称アニコンが開かれていました。

そこで起きた火炎瓶と刃物による大量殺傷事件。

しかし、犯人自身も焼身自殺をしてしまい、動機が分かりません。

 

現場に居て、犯行の一部始終を動画撮影したアニオタの大学生、

犯人と小学校で同級生だったエリート銀行員、

同じく小学校で犯人をイジメていたが今は子ども思いの自動車整備工、

そしてアニメファンだった娘を殺された母親の4人の視点で、書かれています。

 

人間はまだ進化が十分じゃないんだ、って。

進化が足りないから、世の中にはいやなことがたくさん起きる

(中略)

強い者だけが生き残り、弱い者が死ぬのは仕方ないって

考えるのは、動物の理屈だ、って。

人間は動物であるのをやめて、

社会生活を始めたはずなのに、

(中略)

なのにいまさら自己責任を言い出すのは、

人間であることの放棄だ。

 

簡単に個人情報が晒されてしまうSNSや、

匿名による個人攻撃で叩かれ生活が壊されてしまう怖さとともに、

格差社会、勝ち組と負け組、社会的の弱者の苦悩が綴られていきます。

想像力の欠如、他人を思いやることのない冷たい社会。

それでも最後には、前向きな文章で結ばれます。

 

今日もまた、一日が始まる。

しかし、昨日と同じ一日ではなく、

少しでもいいから

よい一日になってくれることを願った。

 

本当にそう思います。

人間の心には、悪の芽ばかりではなく、

善の芽もあると信じたいです。

そう言えば、ベテルの家の向谷地さんの言葉に

『安心して絶望できる人生』と言うのがありました。

苦労や悩みがあっても、それを受け入れて、

悪い芽も善の芽も、そのまま諦観していく生き方なんだと思います。

これからの人生

WOWOWで、韓国ドラマ『誰も知らない』の全16話を観ました。

15歳の少年の転落事故と、未解決の19年前の連続猟奇殺人事件、

その謎を追う女性刑事チャ・ヨンジンが、とにかく格好いいです。

(もし日本でドラマ化されたら、刑事役は間違いなく

 天海祐希さんをイメージしましたが、観終わった後では、

 篠原涼子さんも有と思いました)

 

被害者家族の言葉が、強く印象に残りました。

『彼も、私たちと同じように、これからも生きる』

 

このドラマは、人生の「救済」と「復活」がテーマです。

その象徴である、主人公の高校生コ・ウノが、とにかく良い子です。

そして、彼と関わる人々、ドンミョンも、ミンソンも、担任のイ・ソヌ先生、

理事長、ウノの母親、さらにはチャン・ギホまでもが、

コ・ウノに触発されて、次第に良い人へと「救済」「復活」していきます。

 

19年前の連続殺人事件で、ファン係長とチャ・ヨンジンが出逢って、

7年前にチャ・ヨンジンとコ・ウノが出逢い、

そして、不可解な転落事故が起きます。

過去と現在、両方の事件の真相が、徐々に明らかになるにつれて、

コ・ウノの家族やイ・ソヌ先生、クラスメイトたち、

さらには、チャ・ヨンジンが率いる捜査チームのメンバーたちが、

互いに信頼で結ばれて、一つにまとまっていきます。

いつしか、孤独だったチャ・ヨンジンもコ・ウノも、

それによって、「救済」「復活」していきます。

途中から、謎解きは二の次で、

素直に、韓国人って、良い人ばかりだと思える良い話でした。

 

一方で、〇〇〇〇に関わった人々は・・・

そして思わず、口にした言葉

『お前だったら 違っていただろうか』

 

子どもは純粋であるがゆえ、一番辛い時、出逢った大人によって、

強い影響を受けて、天使にも、悪魔にも育つ、と言うことでしょうか。

しかし、それだけではないと思います。

 

『神のお導きだと思わないでください。

 僕が自分で決めたんです』

 

コ・ウノが持っていた本の題名が『これからの人生』です。

開け放たれた窓から、白い小鳥が、外へと飛び立つシーンがありました。

出逢いと、自らの意志による選択が、“これからの人生”を決めます。

“偶然”、それとも“選択”

東野圭吾さんの小説『沈黙のパレード』を読みました。

 

福山雅治さんが、TVドラマと映画で演じた“ガリレオ”こと天才物理学者

湯川博士が、久しぶりに登場します。

ネタバレをしないように、内容は一切触れませんが、

すでに映画化されることが発表されています。

 

まだキャストは、福山雅治さん以外は、草薙刑事役の北村一輝さん、

内海刑事役の柴咲コウさんしか、公表されていませんが、

配役がとても楽しみです。

 

これまでに映画化された2作品では、

堤真一さんと松雪泰子さん、杏さんと前田吟さんの演技が圧巻でした。

 特に第一作目の『容疑者X の献身』のラストシーンでの堤真一さんの慟哭は、

マイベストワンカットに上げたいと思っています。

(全然、話は違いますが、先週の大河ドラマを観て、また思い出してしまいました)

 

『同じようなことはもう繰り返したくない』

 

親友の悔しい思いを晴らしてやりたかった』

 

おそらく、今度の映画がそれを越える作品になることが、期待できそうです。

しかも、魅力的な役が何人も居ます。さて、どの役を誰が演じるのでしょうか?

 

ピュアな心/心の闇

Eテレの番組『SWITCH インタビュー達人達』で

イヤミスの女王」と呼ばれる小説家の湊かなえさんと、

劇団四季オペラ座の怪人』の主演を務める佐野正幸さんとの対談を観た後で、

本田翼さんと山本美月さんが主演した

湊かなえさん原作の映画『少女』を観ました。

 

『ヨルの綱渡り』

 かわいそうなヨル 哀れなヨル

 闇の中で どんなに目を凝らしても

 見えるのは 膨れ上がる幻ばかり

(中略)

 夜が明ければ ヨルはきっと言葉を失い 

 3秒後には 大笑いするはずだ

 だって 綱渡り思っていたロープは

 太く頑丈な橋の上に 

 ただ置かれているだけなんだから』

 

稲垣吾郎さん演じた“タカオ”さんの台詞です。

 

『小説を書くって大変なことだよ

 主人公の心の闇に深く踏み込んでいく

 それって強い覚悟がないと書けない

 自分が壊れるのも恐れずに』

 

いつか、自分も小説を書いてみたいと思いました。

 

 

家族とは

重松清さん原作、山田孝之さん主演の映画『ステップ』を観ました。

 

家庭とは何か?……「育つ場所」「命のある場所」

 

『つらくても、大切な思い出になります

 僕たちは そうやって生きてきました

 (中略)

 悲しみも さみしさも消えません

 だけど 乗り越えるものでもない

 つきあっていくしかないものなんだと

 僕たちが生きていく日々が教えてくれました

 (中略)

    その分 優しくなれます

 生きることに 一生懸命になれます』

 

 生老病死 愛別離苦 という言葉が浮かびました。

 

山田孝之さんの義父を演じた國村隼さんの演技が、圧巻でした。

TVドラマ『テセウスの船』の鈴や『凪のお暇』のうららを演じた

白鳥玉季ちゃんをはじめ、

中野翠咲ちゃん、田中里念ちゃんの3人の子役たちの可愛さに、

思わず、“ほっこり”“うるうる”してしまいました。

 

原作の小説を是非読んでみようと思います。

重松清さんは、映画の公式ホームページのインタビューの中で、

次のように、“家族”について、話されていました。

 

家族って、決してまん丸な満月ではないと思うんです。

みんなちょっとずつ何かが欠けていたり、足りなかったり、失われていたり、

思い通りにならなかったりするけれど、それを補ってくれる誰かがいる。

そのことを信じていいんだと教えてくれるベースキャンプが、

親子や夫婦だと思うんです。

 

このインタビューの中で、

重松清さんは『その先をまた書きたいと思った』と言ってました。

是非、書いていただいて、美紀ちゃんの結婚、さらには出産まで

映画化して欲しいと思いました。

 

 

 

 

 

天国と地獄

石田衣良さんの小説『北斗 ある殺人者の回心』を読んで、

昔、観たある映画を思い出しました。

その映画は、名優ロビン・ウイリアムズと若きマット・デイモン

ベン・アフレックが共演した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』です。

 

僕の二十一年間は空っぽの人生でした。

生まれてきていいことは何もありませんでした。

何も持たない、何も感じない空っぽの人間が、

幸せな女の人を二人刺してしまった。

(中略)

…僕は、ただ抱き締めて、欲しかった……

お母さんに、愛されたかった

(中略)

……いいことをしても、

悪いことをしてもうちの子だと……

 

天国と地獄。

最近、話題になった6チャンのTVドラマでも、

空集合」になりたいと願う“サイコパス”が登場しました。

間違いなく、彼もいわゆる“サバイバー”だと思います。

 

映画では、ロビン・ウイリアムズが演じた心理学者が、

マット・デイモンを抱き締めて、何度も何度も、繰り返して言います。

『お前は悪くない。お前のせいじゃない』

 

TVドラマでは、綾瀬はるかさん演じる刑事が、泣きながら、

いきなり「空集合」を殴り飛ばして、言います。

『あんたは空集合なんかじゃないんだからね!

 ちゃんと居るんだからね、あんたのことが好きで心配して、

 そうやって守ってやろうっていう人間が』

 

“回心”は宗教用語で、英語だとconversion 。仏教では「えしん」と読みます。

「神に背いている自らの罪を認めて、神に立ち返る個人的な信仰体験」を指します。

そうすると、「神に背いている」と地獄、「神に立ち返る」と天国なのでしょうか?

神=人の“善なる心”、“正しい道”と、置き換えて考えれば良いのでしょうか?

 

ちなみに、『北斗』の方は、WOWOW中山優馬さん主演で、ドラマ化されています。

里親の近藤綾子役を宮本信子さんが、高井弁護士役を松尾スズキさんが演じています。

再放送されることがあったら、是非、観たいと思います。