長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

『優しい人』になりたい

先日、映画『ジョーカー』を観て感じたこと、その中で書かなかったと言うか、

書けなかったことがあります。

それは「相模原障害者施設殺傷事件」の加害者である“彼”を連想したことです。

さらに、今日、彼の歪んだ思想と、ナチスドイツの『優生思想』を関連付ける

テレビ番組をやっていて、たまたま観ました。

でも、一個人が犯した犯罪と、国家による虐殺を、わざわざ結び付けることに、

自分は、強い“違和感”を感じてしまいました。

悲惨な事件が起きた施設「やまゆり園」は、今でこそ、相模原市緑区の住所ですが、

市町村合併される以前の住所は、津久井郡相模湖町でした。

津久井郡は、神奈川県の北西の端に位置して、山梨県に近い、まさに山奥です。

港区南青山のような市街地の中ではなくて、都心から遠く離れた場所に、

150人もの知的障害者を収容できる大規模施設が作られたこと、

そして、その施設に自分の子や兄弟姉妹を預けるしかなかったという、

これまでの日本の福祉に、あの事件の“根っこ”があると思っています。

 

ここで、話は変わりますが、

先日、米津玄師さんの新しいアルバム『STRAY SHEEP』が発売されました。

その7曲目に『優しい人』という曲が『馬と鹿』と『lemon』の間に収録されています。

以下は、その歌詞です。

 

気の毒に生まれて 汚されるあの子を
あなたは「綺麗だ」と言った
傍らで眺める私の瞳には
とても醜く映った

噎せ返る温室の 無邪気な気晴らしに
付け入られる か弱い子
持て余す幸せ 使い分ける道徳
憐れみをそっと隠した

(中略)

周りには愛されず 笑われる姿を
窓越しに安心していた
ババ抜きであぶれて 取り残されるのが
私じゃなくてよかった

強く叩いて 「悪い子だ」って叱って
あの子と違う私を治して

あなたみたいに優しく
生きられたならよかったな

優しくなりたい 正しくなりたい
綺麗になりたい あなたみたいに

この歌は、米津さん自身の小学校時代の体験が、元になっているようです。

優しい“あなた”は、先生でしょうか?それとも同級生でしょうか?

 

話を戻しますが、事件を起こした彼は、平成2年に生まれだそうです。

(米津さんは、平成3年の生まれなので、ちょうど同世代です)

彼は、小さい頃から施設のすぐ側で暮らし、施設とも交流があった小学校に通って、

大学では教育学部で学んで、卒業後に数年間、施設で非常勤職員として働きました。

彼は、何を見て、何を学び、何を感じて、あの犯行に及んだのでしょうか?

 

でも、一つだけ確かなことがあります。それは、彼の偏った“正しさ”も、

(米津さんの素晴らしい才能も)間違いなく、平成の日本で育ちました。