罪と罰(その5)更生とは何か?
続けて、大門剛明さんの小説『告解者』を読みました。
主人公は、金沢市の郊外にある更生保護施設の補導員を務めています。
「人は変われる。一緒なら」
「刑によって痛みと苦痛を教えることは出来ても、
すさんだ心を元に戻すことなどできません。
刑にどう対処するかという抵抗力、ずる賢さが増すだけです。
加害者であるのに、被害者意識だけが増幅してしまう。
すさんだ心が、刑によって清められることは決してない。
そう思います。自力で人は変われないんです」
更生保護施設とは、刑務所を出たものの身元引受人がいない者などを
保護観察所からの委託を受けて、一時的に預かる民間の施設です。
宿泊や食事を供与しながら、社会復帰に向けた生活指導、就労指導を行います。
そこに、2人の人を殺し、無期懲役の判決を受けて、
22年間服役した後に仮釈放となった男が入所してきます。
その男が主人公に問います。
「更生とは何なんですか」
「思いのこもらない謝罪でも、無理にしなければいけないのでしょうか?
心から謝罪することこそが更生ーーー本当にそうなんですか。
私は更生出来ないんでしょうか」
そして、 主人公が答えます。
「更生できない人なんていない!」
(中略)
「更生っていうのは、たぶん……永遠に未完成なものなんです」
「更生したーーーそんな言い方がそもそもおかしいんじゃないですか?
更生ってものはいつも途中。決して完成なんてしないものなんです。
今自分の中に心からの謝罪の思いがないからといって絶望する必要なんてない。
毎日必死で頑張って前に進もうと努力する……地味な行為の積み重ねの中に
更生はあるんです。更生した、しないーーー白か黒で見るものではないんです」
そう言えば、“最弱の保護司”佳代ちゃんも言ってました。
「更生って、更に生きると読める」って。