小細工なしでも良かったのではないでしょうか?
令和になって、最初に読み終わった小説は、葉真中顕さんの『ロスト・ケア』です。
同じく、最初に観た映画は、宮沢りえさん主演の『湯を沸かすほどの熱い愛』です。
『ロスト・ケア』は、少子・高齢化社会においての介護の現状が、当時者=家族と事業者の視点から、リアルに書かれた力作で、2012年の日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しました。
「穴の底で、愛情と負担の狭間で、もがき苦しんでいる人がいくらでもいた。
しかも世間はその穴を埋めることもせず、想像力を欠いた良識を振りかざし、
そんな人たちを更に追い詰めるんです。『ロフト・ケア』は、そんな人たちを救う手段です。
僕はかつて自分が誰かにして欲しかったことをしたんです」
「不思議な人です。あの人の為だったら なんでもしてあげたいっていうか…
多分それって、その何倍もしてもらってるって 思えてるからなんじゃないかなって」
どちらの作品も“家族”の“絆”そして“愛情”がテーマで、明確かつ根源的であり、それぞれの登場人物がしっかりと魅力的に描かれています。そして、両方とも題名が“肝”になっています。
だからと言って〈彼〉の正体と、映画のラストのサプライズはナシです。さすがに、それはダメです。
余計な小細工はせず、そのままストレートに終わった方がむしろ良かったと思いました。
トリッキーな展開は、かえって話を安っぽくしてしまったと思います。それよりも〈彼〉に罪を認めさせる攻防、お母ちゃんの愛情に報いようと頑張る場面が、もっとあれば良かったと思います。