長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

人と犬 賢いのはどっち?

馳星周さんの『少年と犬』を読みました。第163回の直木賞受賞作です。 本作は『男と犬』『泥棒と犬』『夫婦と犬』『娼婦と犬』『老人と犬』そして 受賞作の『少年と犬』の六編からなっている短編集です。 駐車場の隅に犬がいた。首輪はついているようだがリ…

村上主義者ふたたび

村上春樹さんの本を、続けて二冊、読みました。 父に関して覚えていること。(中略)僕と父の間には ——おそらく世の中のたいていの親子関係がそうであるように—— 楽しいこともあれば、それほど愉快でないこともあった。 で始まる、一冊目は『猫を棄てる 父親…

贖罪、人間に戻るために

薬丸岳さんの『告解』を読みました。 題名の『こっかい』とは、キリスト教の幾つかの教派において、 罪の赦しを得る儀式、告白の行為のことだそうです。 よく知られた言葉では“懺悔”とも言います。 罪を犯した人がどれほどの償いの気持ちを持っているのかは …

平成という時代を描いた作品

林民夫さんの小説『糸』を読みました。 瀬々敬久監督の同名映画のノベライズですが、小説としても完成度が高いと思います。 そもそも、林民夫さんは小説家ではありません。映画『糸』の脚本家さんです。 さらに言えば、映画も、中島みゆきさんの歌をモチーフ…

外の人間が求める答と、ほんとうのこと

呉勝浩さんの最新作『スワン』を読みました。 巨大ショッピングモール「湖名川シティガーデン・スワン」で起きた 無差別銃撃事件で、犯人の一人に捕まり、生き残った女子高生が主人公の話です。 彼女は、当初の被害者の立場から、一転して、 加害者のように…