人と犬 賢いのはどっち?
馳星周さんの『少年と犬』を読みました。第163回の直木賞受賞作です。
本作は『男と犬』『泥棒と犬』『夫婦と犬』『娼婦と犬』『老人と犬』そして
受賞作の『少年と犬』の六編からなっている短編集です。
駐車場の隅に犬がいた。首輪はついているようだがリードはない。
飼い主が買い物をしているのを待っているのだろうか。
賢そうな犬だか、かなりやつれている。
どの話も、同じ一匹の犬「多聞」が、東日本大震災直後の仙台から
福島、新潟、富山、滋賀、島根、そして熊本までを、5年間掛けて移動し、
それぞれの場所で、“訳あり”の人たちと出逢っては、別れるまでを綴った話です。
なので、この順番に、読むことを強くお勧めします。
それによって、受賞作が、より一層、読み応えがある話となります。
人という愚かな種のために、神様だか仏様だかが遣わしてくれた生き物なのだ。
人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にいない。
「多聞は神様からの贈り物ね」
「おれたちにとっての天使だな」
間違いなく、馳星周さんが、書きたかったのは、この言葉です。
馳さんと言えば、裏社会を舞台にしたノワール作家として有名ですが、
実は、知る人ぞ知る、超“愛犬家”です。
これまでにも『ソウルメイト』『陽だまりの天使たち ソウルメイトⅡ』
『雨降る森の犬』といった、犬と人の関わりを描いた作品を、これまでも書いています。
さらに、ご自身の飼い犬を記した『走ろうぜ、マージ』などのノンフィクションや、
「ワルテルと天使たちと小説家」というブログもあって、どれも犬好きの必読書です。
なお、余談ですが、馳星周さんは、あの“べてる”がある北海道浦河町の出身です。