長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

2020-01-01から1年間の記事一覧

罪と罰(その5)更生とは何か?

続けて、大門剛明さんの小説『告解者』を読みました。 主人公は、金沢市の郊外にある更生保護施設の補導員を務めています。 「人は変われる。一緒なら」 「刑によって痛みと苦痛を教えることは出来ても、 すさんだ心を元に戻すことなどできません。 刑にどう…

罪と罰(その4)被害者遺族の癒し

大門剛明さんの小説『氷の秒針』を読みました。 長野県の諏訪地方を舞台に、 殺人罪に対する「公訴時効の撤廃」と「被害者遺族の感情」をテーマにした話です。 読み終わった瞬間に、米津玄師さんの『lemon 』が頭の中で流れました。 主人公の原村俊介と中堂…

一度きりのピタゴラスイッチのはずが…

話題のTVドラマ『MIU404』が、先日、最終回を迎えました。 いわゆる「夢オチ」については、賛否両論あるみたいです。 “時間を止めて元に戻す”とか“パラレルワールド”とかは、SFではよくある話です。 ドラッグによる幻覚、二人の深層心理が映し出されたという…

人生は、一度きりのピタゴラスイッチ

綾野剛さんが演じる“伊吹”と、星野源さんが演じる“志摩”がダブル主演の刑事ドラマ 『MIU404』の第3話、サブタイトル『分岐点』での台詞です。 「障害物を避けたりしながら 何かのスイッチで犯罪を犯してしまう」 「人によって 障害物の数は違う 正しい道に…

『優しい人』になりたい

先日、映画『ジョーカー』を観て感じたこと、その中で書かなかったと言うか、 書けなかったことがあります。 それは「相模原障害者施設殺傷事件」の加害者である“彼”を連想したことです。 さらに、今日、彼の歪んだ思想と、ナチスドイツの『優生思想』を関連…

人生は、悲劇でも喜劇でもない

ホアキン・フェニックスが主演し、 アカデミー賞主演男優賞を受賞した映画『ジョーカー』を観ました。 “笑うのは許して 病気です 脳および神経の損傷で 突然 笑い出します” 主人公のアーサーは、緊張すると笑いが止まらなくなるという精神病を抱えていて、 …

理想の職場がありました!

そこで働く人たちが、全員、明るく生き生きとした表情で、良い顔をしていたら、 その職場は、夢のような“理想の職場”ではないでしょうか? 今日の夜、たまたまテレビのチャンネルを回していたら、 まさにそんな職場が、ある番組で紹介されていました。 その…

人と犬 賢いのはどっち?

馳星周さんの『少年と犬』を読みました。第163回の直木賞受賞作です。 本作は『男と犬』『泥棒と犬』『夫婦と犬』『娼婦と犬』『老人と犬』そして 受賞作の『少年と犬』の六編からなっている短編集です。 駐車場の隅に犬がいた。首輪はついているようだがリ…

村上主義者ふたたび

村上春樹さんの本を、続けて二冊、読みました。 父に関して覚えていること。(中略)僕と父の間には ——おそらく世の中のたいていの親子関係がそうであるように—— 楽しいこともあれば、それほど愉快でないこともあった。 で始まる、一冊目は『猫を棄てる 父親…

贖罪、人間に戻るために

薬丸岳さんの『告解』を読みました。 題名の『こっかい』とは、キリスト教の幾つかの教派において、 罪の赦しを得る儀式、告白の行為のことだそうです。 よく知られた言葉では“懺悔”とも言います。 罪を犯した人がどれほどの償いの気持ちを持っているのかは …

平成という時代を描いた作品

林民夫さんの小説『糸』を読みました。 瀬々敬久監督の同名映画のノベライズですが、小説としても完成度が高いと思います。 そもそも、林民夫さんは小説家ではありません。映画『糸』の脚本家さんです。 さらに言えば、映画も、中島みゆきさんの歌をモチーフ…

外の人間が求める答と、ほんとうのこと

呉勝浩さんの最新作『スワン』を読みました。 巨大ショッピングモール「湖名川シティガーデン・スワン」で起きた 無差別銃撃事件で、犯人の一人に捕まり、生き残った女子高生が主人公の話です。 彼女は、当初の被害者の立場から、一転して、 加害者のように…

いっそ小さく死ねばいい

22才の死は、あまりに早過ぎます。 ネットで叩かれ、非難され、追い詰められ、もう自分には居場所がない、 他に選択肢が無いと、思い詰めてしまったのでしょう。 昔、森山直太朗さんが歌った歌があります。 発表当初は、その過激な歌詞から物議を醸しました…

今、自分が出来ること

今から4年前、2016年(平成28年)4月17日深夜、ラジオ番組の終わりの挨拶の言葉です。 今日は私 、オールナイトニッポン月イチ 、休みたい気持ちでした 。日本中の皆様ご存じのとおり 、今 、熊本県・大分県を中心に 、大きな地震が続き 、災害が発生してい…

ファイト!

みゆきさん、こんばんは。わたしは中学を出てすぐに働いて2年になる17歳の女の子です。この間わたしの勤めている店で、店の人がわたしのことを「あの子は中卒だから、事務は任せられない」と言っていたのを聞いてしまいました。わたし、悔しかった。悔しく…

師匠の心

「焦るんじゃないよ。相葉君には『天才!志村どうぶつ園』があるでしょ。ドラマは3か月で終わるけど、『志村どうぶつ園』はずっと続くからね。俺が続かせるからね」 今日、放送された4チャンネルの番組『天才!志村どうぶつ園』の中で、嵐の相葉くんが、志村…

人間力

「取り調べを受ける人間は参考人という記号じゃない。 親が付けた名前がある人間です。相手に真実を吐かせようと思ったら、 人間として向き合うべきでしょう」 柚月裕子さんの小説『検事の本懐』からの引用です。 ぼさぼさの髪によれよれのスーツ、いまどき…

残されたものは

湊かなえさんの最新作『落日』を読みました。 児童虐待、いじめ、引きこもり、一家殺害、自殺と 扱っている題材は、まさに“イヤミスの女王”全開の作品です。 思い出すのは、あの子の白い手。 忘れられないのは、その指先の温度、感触、交わした心。 でも、短…

想像ができない

楽しいことはみぃんな大阪から始まったんやで! 年が明けて、今年最初の小説は、高殿円さんの『グランドシャトー』です。 時は、高度経済成長期の昭和38年、奇しくも前回の東京オリンピックの前年。 大阪の京橋に実在したキャバレー“グランシャトー”をモデル…