長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

罪と罰(その4)被害者遺族の癒し


大門剛明さんの小説『氷の秒針』を読みました。

長野県の諏訪地方を舞台に、

殺人罪に対する「公訴時効の撤廃」と「被害者遺族の感情」をテーマにした話です。

読み終わった瞬間に、米津玄師さんの『lemon 』が頭の中で流れました。

主人公の原村俊介と中堂系が重なります。

 

「俊介さんの時間はずっと凍りついたままなんです」

「あの懐中時計の秒針は動き続けていても、

 俊介さんの心、氷の秒針はきっと動かない。だから...」

(中略)

より深刻な傷を負っていたのは結局、こちらの方だったかもしれない。

そしてその故障はきっと誰にも、時間でさえも治せない。

 

 

最愛の人を、ある日突然失った悲しみ抱えて、周りに当たり散らす俊介。

そして、16年経って犯人(百瀬)が自首をします。

一方で、家族3人が殺され、自分一人だけが生き遺った小岩井薫は、

そのことに罪悪感を抱え、胸の奥の苦しみを隠しながら、生きています。

 

時は痛みを癒しはしない。

遺族の無念の気持ちや報復感情は収まらない。

それどころか、むしろ強くなる。

(中略)

「犯人が罪に問われてもこちら側の痛みとは無関係だって」

(中略)

百瀬が自首、逮捕されても心には穴が空いたままだった。

その正体がやっとわかった気がする。

俺は百瀬の逮捕など本当はどうでもいいのだ。

幸せになりたい……ずっとその欲望に蓋をしてきた。

 

是非、井浦新さんが俊介を、小岩井薫は“あの人“で、

ドラマ化して欲しいと思います。他の登場人物、それぞれの殺人事件の加害者や

その関係者、弁護士や息子、そして執念で退職後も犯人を追い続ける元刑事、

主人公の義父。(ドラマでは義母に変えて、薬師丸さんが演じるのもあり?)

どの人物も味わいが深くて、誰が演じるのか考えるだけでワクワクします。

 

WOWOWさんよろしくお願いします。ちなみに、大門剛明さん作品では

『テミスの求刑』と『獄の棘(ヒトヤノトゲ)』が、ドラマ化されています。

前者は、検察事務官仲里依紗さん、後者は、刑務官を窪田正孝さんが演じました。