長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

原作を読みました。

その作品とは、薬丸岳さんの『悪党』です。
ストーリーの大筋はTVドラマと同じですが、細かい設定は、だいぶ脚色されていました。
前回、引用した台詞もすべて原作には、ありませんでした。

ドラマで、寸分違わず同じ台詞が使われていた場面の一つが、主人公が久しぶりに実家に戻って、
父親と交わす台詞です。

「今何してんだ?」
「探偵をしてる」
「探偵……それは楽しいか?」
「どうだろうね」
「親父……この仕事は楽しいか?」
「どうだろうね……だけど、魂をちぎられるような苦しさはない」
「顔を見ればわかる。どうせやるんなら、たまには笑えるような仕事をしろ」
「いつでも笑っていいんだぞ。いや、笑えるようにならなきゃいけないんだぞ。
 おれたちは絶対に不幸になっちゃいけないんだ」
「もっと早く言ってやるべきだった。すまない……」

もう一場面。主人公と彼女の何気ないやり取りです。

「修ちゃんの夢って何……」
(中略)
「床屋さんかな……」
「えっ?」
「おれの子供の頃の夢さ……」
「いいなあ、そういうの……」
「私も憧れるなあ……いつか、そういう風になれたらいいな。
 私にもなれるかな?」

この後、彼女は主人公の前から、急に姿を消します。
読み続けるのが、辛い話ですが、ドラマとは場所も台詞も違いますが、エピローグに救われます。

私は四年間、探偵という仕事を生業としている。
だけど、これほどその人のことが知りたいと渇望しながら足を棒にしたことはなかった。
辛いときにはひとりにならないで……と、いつか君は言ってくれた。
君のことを知れば知るほど、どうしようもなく愛しさが増してくる。
君をひとりにしたくない。いや、私がそばにいてほしいのだ……

原作の小説も、TVドラマも、重いテーマにもかかわらず、真正面から描いた良い作品でした。
そう言えば、被害者側と加害者側の違いはありますが、昨年末に亀梨和也くん主演で、7チャンネルでTVドラマ化された東野圭吾さん原作の『手紙』も、同じの話でした。“加害者”の弟である亀梨くんが“被害者”の家族を訪ねて、兄の代わりに謝罪する場面がありました。その主人公にも、そばに居てくれる人と、彼を甘やかさずに厳しく接する社長(小日向文世さん)が居ましたね。