長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

#小説

生と死を分かつものは…

たまたま図書館の新刊コーナーに置いてあったのを、手に取って、読みました。 とても深く、重いテーマの本でしたが、最後まで一気に読んでしまいました。 その本は、乾ルカさんの『心音』です。 物語は「終焉」から始まって「誕生」で閉じられます。 「あな…

罪と罰

図書館のホームページで“保護司”をキーワード検索して、ヒットした小説を2冊続けて読みました。 真保裕一さんの『繋がれた明日』と吉村昭さんの『仮釈放』です。 どちらの作品も、人を殺める“罪”を犯して、少年院・刑務所に収監される“罰”を受けて、その後…

原作を読みました。

その作品とは、薬丸岳さんの『悪党』です。 ストーリーの大筋はTVドラマと同じですが、細かい設定は、だいぶ脚色されていました。 前回、引用した台詞もすべて原作には、ありませんでした。 ドラマで、寸分違わず同じ台詞が使われていた場面の一つが、主人公…

夢のように美しいが現実のようにたしかな…

いつものようにWOWOWで放送された映画を観た後で、原作の小説を読みました。 映画も十分に綺麗な映像で満足感は得られましたが、やはり、小説の方が勝っていると思いました。 宮下奈都さんの『羊と鋼の森』です。この作品は、2016年に第13回本屋大賞を受賞し…

小細工なしでも良かったのではないでしょうか?

令和になって、最初に読み終わった小説は、葉真中顕さんの『ロスト・ケア』です。 同じく、最初に観た映画は、宮沢りえさん主演の『湯を沸かすほどの熱い愛』です。 『ロスト・ケア』は、少子・高齢化社会においての介護の現状が、当時者=家族と事業者の視…

さすがです!とにかく後味が悪い話です

宮部みゆきさんの杉村三郎シリーズの第5弾『昨日がなければ明日もない』を読みました。 中編3作品の最初の話は『絶対零度』です。 絶対零度(ぜったいれいど、Absolute zero)は、絶対温度の下限で、理想気体のエントロピーとエンタルピーが最低値になった状…

ニュータイプ?それとも…

天童荒太さんの『ペインレス』を読みました。 読後感を、一言で言うと「消化不良」です。その理由は、主人公の2人があまりにアブノーマル過ぎて、共感が出来ないことからです。昔、ドリフターズのコントで「もしも○○な何々が居たら?」というのがありました…

「何かを変えるのに間に合わないことなんて一つもない」

住野よるさんの『青くて 痛くて 脆い』を読みました。 以下は、冒頭の書き出しの文章です。 あらゆる自分の行動には相手を不快にさせてしまう可能性がある。 高校卒業までの十八年間でそういう考えに至った僕は、 自らの人生におけるテーマを大学一年生にし…

押し潰されないように…

宮部みゆきさんの『この世の春』を読みました。 宮部さんの作品では“有る有る”ですが、読み始めは普通の時代劇、でも途中からはオカルト物と思わせておいて、実は……の話でした?さすがです! 「覚えているというよりも、それと共にいることが私の日常なのだ…

映画『スタンド・バイ・ミー』のような話でした。

そう言えば、宮部みゆきさんは、スティーブン・キングが好きだと、何かで読んだ気がします。 第一部『事件』の巻頭に、宮部さんは、あの『ブレードランナー』の原作者フィリップ・K・ディックの言葉を引用しています。 子供って何にも知らない。だけど子供は…

何が本当か?“記憶”と“妄想”の違いは?

白石一文さんの新作『プラスチックの祈り』を読みました。 いやはや、参りました。 詳しい内容は、伏せますが、とんでもない作品でした。 単行本で、643ページにも及ぶ大作です。 ずっしりと重いです。 本の重さもそうなんですが… 白石一文さんが、これまで…

輪廻ではなく、命を繋ぐということ

東野圭吾さんの『人魚の眠る家』を読みました。 堤幸彦監督の映画はまだ観ていません(いずれWOWOWで放映されたら、必ず観ると思います)。 たくさんの車が行き交う幅の広い道路から脇道に入り、ずっと奥まで進んだところにその家はあった。(中略)その屋敷に入…

やっぱり自分は「村上主義者」です!

年末にWOWOWではなく、国営放送で放映された“ドラマ”を、録画してあったのを観ました。 韓国人映画監督のイ・チャンドン監督の『バーニング』です。 本来は、劇場版148分の作品が、53分も短い95分に短縮して編集され、しかも台詞は、オリジナルの韓国語では…

新しい年の始まりに、爽やかなお話です!

2019年。平成最後の年が始まりました。 今年の1冊目は“イヤミスの女王”と言われる、湊かなえさんの最新作『ブロードキャスト』です。 ところが、意外にも期待に反して(決して新年早々、イヤミスを期待したわけではありませんが)、最後まで爽やかな“青春学園…

平成30年を振り返ってみると

平成30年が終わろうとしています。 今年、読んだけど、このブログには書いていない本は、以下のとおりです。 さだまさしさんの『銀河食堂の夜』 浦賀和宏さんの『十五年目の復讐』 東野圭吾さんの『ラプラスの魔女』 押井守さんの『ひとまず、信じない』 五…

ネットで買うのは作業。本屋で買うのは体験。

碧野圭さんの『書店ガール7 旅立ち』を読みました。 このシリーズは1から6まで、全部、読んでいます。残念ながら、これでシリーズ完結だそうです。 昔から本が大好きだった自分としては、図書館の司書とともに、本屋さんは“憧れの職業”です(中学校では、図書…

生き方は変えられなくても、生活を変えることは出来る

宮部みゆきさんのおなじみ、杉村三郎シリーズの4作目『希望荘』を読みました。 前作の『ペテロの葬列』において、まさかの展開で、大きく生活を変えることになった杉村三郎。 その新生活を描いた短編集です。 人は幸福を求め、そのために努力する。だが万人…

何のために?誰のために?そして想いが引き継がれる

呉勝浩さんの作品のうち、まだ読んでいない最後の作品『蜃気楼の犬』を読みました。 「現場の番場」と呼ばれるベテラン刑事と、駆け出しルーキーの船越「少年」刑事のコンビを主人公とした、五つの連作短編集です。なので、他の長編の作品とは少し趣きが違い…

過去と《今》、そして未来。行けるところまで行ってみるしか

呉勝浩さんのデビュー作『道徳の時間』と、二作目の『ロスト』を続けて読みました。 『道徳の時間』の巻末には、江戸川乱歩賞を受賞したときの審査員選評が載っていますが、その中には、かなり厳しいコメントもあります。 謎の提示の仕方がうまいと感じた。…

人の心は、目に見えないからこそ!?

住野よるさんの『か「」く「」し「」ご「」と「』を読みました。なんとも、不思議なお話です。 しかも、この不思議な題名には、ちゃんとした意味が、隠されていました。 5人の高校生の話です。それぞれが、主人公となった五つの章に分かれています。 それぞ…

サイコパスが全開!サバイバーの反撃?!

呉勝浩さんの『ライオン・ブルー』と 『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』を続けて読みました。 どちらも、簡単に人が殺されて、サイコパスが全開って感じです。 前者が“悪徳警官”、後者が“洗脳”“DV”“毒母VSメンヘラ娘”の話です。 ジャンルと…

サラリーマン、そして世の父親たちの夢!

白石一文さんの『一億円のさようなら』を読みました。 ある日、突然、億万長者になったとしたら?自分は、どうするか? きっと、誰しもが、これまでに一度や二度は、考えたことだと思います。 自分は、宝くじも、競馬も、株も、仮想通貨もやりません。周りが…

人に愛されること、自分を愛すること

島本理生さんの『ファーストラヴ』を読みました。 前半はゆっくりとした感じで、中盤になると、幾つかの?マークが一つ、また一つと増えていきます。 そして後半からは、一気に最後まで読み切らせてしまうのは、さすがだと思いました。 内容は、父親を殺害し…

開く鍵と閉じる鍵

道尾秀介さんの『スケルトン・キー』を読みました。 スケルトンキーとは、元々は古くからある鍵の種類のことで、「合い鍵」の意味もあるらしいです。 スマートフォンをポケットに戻すと、キーが指に触れた。バイクのキーでもアパートのキーでもない。それら…

他人を受け入れること、自分の衝動と向き合う

たまたま新聞の書評を読んで、気になった作家さんの本を図書館で借りて読みました。 ひさびさに、途中で読むのを止められず、明け方まで、一気に読み切ってしまいました。 呉勝浩さんの『白い衝動』です。本当に衝撃的な話でした。 Aはその特異な衝動ゆえに…

これぞ、大河歴史小説!

帚木 蓬生さんの『襲来』を読みました。帚木 蓬生さんは、“全作品読み作家”の一人です。 最初に読んだ作品は『閉鎖病棟』でした(何年前だったでしょうか?まだブックオフに通い始めてすぐのころに、題名が気になって、買って読んでハマって、幾つかもの店を…

本格派ですね

麻見和史さんの『骸の鍵』を読みました。WOWOWでドラマ化された『石の繭』以来、全作品を読破し、新刊が出ると必ず読んでいる作家さんの一人です。 題名の感じで、またあの警視庁捜査一課第十一係シリーズかと思って読み始めましたが、残念ながら、如月塔子…

親バカ、そして親不孝

門井慶喜さんの『銀河鉄道の父』を読みました。 宮沢賢治の生涯を、父親の政次郎さんの視点から、自身の揺れる内心の葛藤とともに記した小説です。親から見れば、子どもは幾つになっても、子どもなんだとあらためて思いました。 神格化されてない宮沢賢治、…

未来のために

湊かなえさんの『未来』を読みました。これまで読んだ本の中でも、一番に悲しい話でした。 彼や彼女たちが向き合ってきた過酷な出来事に、ただただ圧倒されてしまい、言葉が出ません。 「人間も初期化出来るといいのにね」 実際に彼や彼女たちが、勇気を出し…

普通のことが普通に。当たり前のことが当たり前に行われる。

夜になると、僕は化け物になる。 次の住野よるさんの作品は『よるのばけもの』です。 読み終わった後、この本はとても怖い話だと思いました。 「昼の姿と夜の姿、どっちが本、当?」 アドラー先生もおしゃっていました。「嫌われる勇気」があれば、自由に生…