長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

人の心は、目に見えないからこそ!?

住野よるさんの『か「」く「」し「」ご「」と「』を読みました。なんとも、不思議なお話です。

しかも、この不思議な題名には、ちゃんとした意味が、隠されていました。
5人の高校生の話です。それぞれが、主人公となった五つの章に分かれています。
それぞれの章は、題名の「」の中に、、。!?、\/=*、1234、♠♢♣♡、↓←↑→が入ります。
その全部にも意味があります。

我ながら女の子の匂いの違いに気がつくなんて大分キテると思うけど、気づいちゃたものは仕方ない。(中略)ふわりと彼女の周りに浮いているシャンプーの匂いがいつもと違っていた。

たかが、シャンプーの匂い。それが高校生には、大問題になることを思い出させてくれました。
本来、人の心は目には見えません。だから、人は悩んだり、後悔したり、いちいち一喜一憂をします。
気になる異性だったら、授業や試験に集中出来ません。そして、ときには、思い込みや思い違いから、相手と気持ちが行き違いがしばしば起こります。その一方で、世の中には、人の心が、実際に目に見える人が、一定数はいると思います。

そうやって皆が支え合っているんじゃないかって思い始めました。自分が周りの皆に何をしてあげられているかはまだあんまり分からないけど、一緒にいてくれるってことは、少しでも何か出来ることがあるのではないかと信じてみようとみようと思います。(中略)私が皆にしてあげられることがなんなのか、それが、自分とは誰なのかという問題の答えのような気がします。

自分も、いつぐらいからか忘れましたが、話をしている相手の人の心が、「前向き」なのか「後向き」なのか、「悪意」があるのか「善意」なのか、感じることができると思っています。
でも、ほとんどの場合に、本人が自覚していないことが多いです。ましてや、意識して、自分でコントロールしている人は、極めて稀にしか居ないように思います。 

人が最も悩むのは人間関係、なんていうけど、人間関係なんて簡単だ。そんなの、心臓のとこに見えるシーソーみたいなバーのバランスをちょっとプラス側に傾けてやればいい。

もっとも、人の心が見えたとしても、それはその時に、相手が自分に対して見せた一面でしかなく、それが相手の心の“すべて”でもありませんし、結局は自分が感じたものでしかなく、“真実“かどうかの確認も(相手に聞くわけにもいきませんから)、難しいと思います。また、相手は当然として、自分とは別人格であり、自分が相手を思い通りにコントロール出来るなんてこともありません。そして、何よりも相手の心が見えたとしても、自分の心が、自分が思うようにはコントロール出来ないことが、実は問題です。

冷静さを長所だと言う人間もいるだろう。だが、違う。ただ冷たい人間というだけだ。自虐的な考えでありながら、同時に自分は皆とは違う特別な人間であると信じ切っている己を再確認して、朝っぱらから嫌気がさした。

だとしたら、人の心は、お互いが目に見えないからこそ、相手を気遣い、相手を尊重して、そして相手の幸せを強く想うことで、結果的には、上手くいくのかもしれませんね。

想いこそが、人と人との関係性を決める最も強いものであり、すべての事情を飛び越えるはずだと。

自分は、目に見えない“人の想い”を、目に見える“形”にすることが、福祉や行政に携わる人間の使命だと、信じています。星の王子さまではないですが、本当に大切なものは目には見えないものです。