長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

押し潰されないように…

宮部みゆきさんの『この世の春』を読みました。
宮部さんの作品では“有る有る”ですが、読み始めは普通の時代劇、でも途中からはオカルト物と思わせておいて、実は……の話でした?さすがです!

「覚えているというよりも、それと共にいることが私の日常なのだ」
だからこそ、それを封じておかねば息をすることさえできなかった。
「私を押し潰そうとする大岩を、両手で懸命に支えている。一人で、日々力を振り絞って支えている。
 傍らの誰かに、私は今にも潰されそうだと声をあげて助けを求めることはできない」

偶然にも、今日の朝日新聞の夕刊1面トップの見出しは

児童虐待被害 最多1394人』

でした。

以下は、リード記事です。

「作年1年間に全国の警察が摘発した児童虐待事件は1380件で、
 被害に遭った18歳未満の子どもは1394人だった。ともに過去最多で、うち36人が亡くなった。
 夜間など緊急の対応が必要として、警察が一時的に保護した数は統計がある2012年から増え続け、
 4571人に上った。警察庁が14日発表した」

これだけの子どもたちが、保護されたことを喜ぶべきなのでしょうか?
それとも、これだけの子どもたちが、辛い体験をしても、誰にも言えずに居たことが衝撃です。
なんの言葉が出て来ません。

誰も信じてくれないと思い込んでいたから。
誰も助けてくれないと思い込んでいたから。
誰にも言えぬと思い込んでいたから。
(中略)
「でも、今は違う。今は真の味方がいる」
全てを語れば、それを受け止めて信じてくれる人々が。

題名の『この世の春』は、終章の副題です。
そこには、宮部さんの“想い”“願い”“祈り”が、込められていると思います。