長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

人の愛し方 愛され方が分からない人

WOWOWで、角田 光代さん原作の『坂の途中の家』を、柴咲コウさん主演の連続ドラマで観ました。

3歳の娘と夫と3人で平穏な暮らしをしていた主人公の元に、ある刑事事件の裁判員候補に選ばれた
という通知が届きます。その事件とは、生後8ヶ月の娘を浴槽に落として、虐待死させたものでした。

平行して、原作の方も読みましたが、少し内容が変えられていました。
原作は、最初から最後までずうっと主人公の視点で書かれています。
それに対して、ドラマの方は、主人公以外の何人かのエピソードが挿入されています。
そして何よりも、被告人の裁判中の振る舞い、服装などが違っていて、
判決も少し異なります。

相手を貶めて 傷つけて 支配して
そうすることで 自分の腕から出ていかないようにする
そういう愛し方しか できない人がいます
こんな簡単なことに どうして気がつかなかったのか
それは 私が考えることを放棄していたからでした
自分の幸せを人に決めてもらっていたからです
誰かの価値観に従って生きるのは とても楽だったから
(中略)
小さなことの積み重ねに むしばまれて
周りの人たちの正しい言葉に 打ちのめされて
子どもに申し訳なくて
私が お母さんでごめんなさいと 自分を責めてしまう
愛しているから 間違ってしまう
愛しているから 絶望するんです
被告人に必要だったのは そのことを理解してくれる
誰かの優しい視線と 共感だったと思います

ネタバレになるので、詳細は避けますが、角田光代さんらしい、家族の内面の奥深くにまで
踏み込んだ、見応えのあるドラマでした。
WOWOWで再放送があれば、是非、観てもらって、原作と読み比べて欲しいと思います。

余談ですが、ドラマの主人公以外の挿入エピソードで、別の裁判員が、近所の公園でネグレクトされていた子を、自宅に連れて帰ります。その子役は、なんと『万引き家族』のあの女の子でした。
『ママは悪くない!』ってセリフには、思わず、涙腺が崩壊しそうでヤバイかったです。

また、児童虐待とは異なりますが、行政や周りの誰にも相談が出来ずに、独りで抱え込んでしまって、精神的に追い詰められ、ついには絶望して、犯行に及んでしまったという意味では、登戸や元農林水産事務次官の事件、いわゆる『8050問題』にも繋がっていると思いました。