長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

罪と罰(その2)

ビッグコミックオリジナル連載中の漫画『前科者』の最新話で、
“最強の保護観察中女子”みどりさんが、“最弱の保護司”佳代ちゃんに言います。

佳代ちゃんの良い所は強さじゃない。
むしろ弱さだよ。
今の時代、強いヤツは信用できない。
弱いからこそ、みんな佳代ちゃんを信用すんだよ。

最初に読んだときには、今ひとつ腑に落ちませんでした。

でも、宮迫博之さんと田村亮さんの記者会見を見て、なんとなく解ったような気がしました。
二人とも、金銭を受け取ってないと嘘をついてしまったことは、非難されても仕方ないし、
直ぐに謝罪をすべきだったと思います。番組降板や一時的な謹慎もやむを得ないかもしれません。
しかし、そうであったとしても、二人が犯した“罪”は、ここまで追い詰められて、
社会的に抹殺されるほど厳しい“罰”を受けるようなことなのでしょうか?

人が生きていく限りは、一度も過ちを犯したことがない人はいません。
時には“魔が差す”こともあります。問題は、その後、どのように行動するかだと思います。
宮迫さんや亮ちゃんのように、名声があって、いくつものTV番組のレギュラーを務めて、
相方や関係者に対する責任がある立場であれば、尚更だと思います。
だからこそ、自分自身の“弱さ”と正直に向き合うことは、勇気がいることなんだと思います。
自分は同じ弱さを抱える人間として、宮迫さんと亮ちゃんを、これからも応援したいと思いました。

明日の記者会見で、はたして、吉本興業という会社が、弱い人間を抱え込んで面倒を看る会社なのか、
それとも、弱者を切り捨てる会社なのか、注目したいと思います。

嘘は常に許されるべきものだ。嘘は愛すべきものだ。何故なら真実を導くから。

私の欲しいのは金ではなく、また金の力でもない。
金の力で得られるもの、また、その力なくしては、どうしても得られないものが必要なのだ。

いったい人間は何を最も恐れてるだろう?
しい一歩、新しい自分自身の言葉、これを何よりも恐れているんだ。

ドストエフスキーの『罪と罰』からの引用です。
今の時代、“強い者”=金の力、権力を持つ者だと、みどりさんは言ったかったんだと思います。

人は“嘘”や“過ち”“弱さ”を認めることで、新しい自分を知ることがが出来ます。
レイザーラモン、そしてカラテカが見られたとしたら…
その時には、この社会も、まだまだ捨てたもんじゃないと、実感が出来ると思います。

最後に、ドストエフスキーの『罪と罰』の巻末の文章を引用します。

新しい生活は、ただ得られるものではなく、それははるかに高価であり、
それを手に入れるには、将来にわたる大きな献身によって償っていかなければならない……
しかも、もう新しい物語ははじまっている。ひとりの人間が少しずつ更生していく物語、
その人間がしだいに生まれ変わり、ひとつの世界からほかの世界へと少しずつ移りかわり、
これまでまったく知られることのなかった現実を知る物語である。

これはこれで、新しい物語の主題となるかもしれないーしかし、わたしたちのこの物語は、
これでおしまいだ。