長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

真実は、いつも一つ?たった一つの真実を見抜く?

ご存知、アニメ『名探偵コナン』の決め台詞です。
でも、本当に“真実”って、たった一つだけなのでしょうか?

それを考えたのは、是枝裕和監督(佐野晶さん共著)の『三度目の殺人』のノベライズ本を読んだからです。(映画の方は、まだ観てませんが、今度DVDを借りるか、WOWOWで観ようと思います)

詳しい内容については、ネタバレになるので触れませんが、なんとも不思議な、でも一方では、ある意味とてもリアリィーがある話だと思いました。

物語の最初のころ、福山雅治さんが演じる重盛弁護士の言葉です。

「いや、理解とか共感とか、弁護するのに、そういうの、いらないよ」
「どっちが本当かなんて、どうせわからないんだから。だったら(法廷戦術に)より役に立つほうを選ぶ」

それが、役所広司さん演じる殺人事件の被疑者を弁護するために、何回か接見し、言葉を交わして、事件を調べていく過程で、徐々に変わっていきます。そして、物語の後半では、

重盛は完全に混乱してパニックになりかけていた。何が真実なのか、重盛は心底知りたかった。
「頼むよ!今度こそ、本当のことを教えてくれよ!」重盛は絶叫していた。

そもそも“人”って、あらかじめ、何かプログラムみたいものが、組まれているわけではありません。そのために、こうすれば必ずこうするって、パターンが決まってもいません。ましてや、Aさん、Bさん、Cさん・・・と、一人一人が違う行動をすることが、むしろ当たり前です。時には、想像も出来ないような、突拍子もない行動することさえあります。実際に、自分でも後で振り返ってみて、なんでそんなことをしたのか、説明出来ない、なんてことがありませんか?

では、“真実”とは何ですか?裁判では、いったい何が、裁かれるのでしょうか?
少なくとも、たった一つの真実を見抜く名探偵は、フィクションの世界にしか、存在しないと思います。

話は変わりますが、是枝監督と言えば、カンヌ国際映画祭でのパルムドール受賞は、まさに快挙です。作品の封切りが待ち遠しいです。さらに、7月7日にWOWOWで『三度目の殺人』の放映が決まったみたいです。こちらも必ず観たいと思います。