長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

天国と地獄

浦賀和宏さんの『HEAVEN 荻原重化学工業連続殺人事件』と『HELL 女王暗殺』を、一気に続けて読みました。刊行されたのは、この順なのですが、前者を買うだけ買って読まずにいたところ、後者が発売されたので、先に『HELL 女王暗殺』を読みました(物語の時系列は、後者が前者の前日譚なので、正しい順番なのですが)。あるいは順番が違っていたら、刊行された順番に読んだら、それぞれの印象がまったく違っていたかもしれないな、と思いました。

そもそも浦賀和宏さんは、自分が図書館の予約ではなくて、文庫新刊を即買いをする数少ない作家さんです。と言っても、最初に買って読んだのが『彼女は存在しない』でした。そして、それ以降に発売の文庫本だけを読んで、ノベルスシリーズの方はまったく読んでいません(今回の2冊も、文庫化されるに際して、改変されて、コンパクトになっているみたいです)。なので、自分では珍しいことに、お気に入りの作家さんなのに、全作品を読んでません。

浦賀和宏さんの作品ジャンルとしては、ミステリーもしくはファタジー、SFになるのでしょうか?ホラーの要素もかなりあり、宮部みゆきさんや森博嗣さん、綾辻行人さんとも、被るところがあります(ただし、宮部みゆきさんのように時代劇ものはありません)。でも、読後感は、独特で、かなり異なります。

ハッキリ言えば、結末があまりに悲劇的、破滅的で、身も蓋もないと言うか、救いがなく、顛末に驚きはありますが、何なんだって感じです。例えば、中心的な登場人物に感情移入すると、あっさり惨殺されてしまいます。なんか、とても裏切られた気がして、モヤモヤした感覚だけが、後に残ります。特に、今回の順番で読むと、より強くそう思いました。なので、読めば読むほど、主人公が誰なのか、よく分からない状態になります。それもあって、浦賀和宏さんの作品は、映像化は難しいと思います。でも、おそらく、読み物としては、一定のコアなファンを獲得して、謎の企業である“荻原重化学工業”を中心に、これからも、いろんな登場人物が現れては、居なくなると思います。居なくなったと思っていたら、唐突に復活したりするのでしょう。

だからかもしれませんが、浦賀和宏さんの作品は、何故か、クセになります(好き嫌いが分かれると思いますが)。自分は、とても次回作が気になります。たぶん、また買ってしまうと思います。

天国と地獄。果たして誰にとって、何が“天国”で、何が“地獄”なのでしょうか?
読み終わって、数日が経ちますが、今も消化不良の状態で、まだモヤモヤしています。ある意味、嫌な作家さんです。