長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

「ひとの心がわかる弁護士」ふたたび

続けて、朔立木さんの『暗い日曜日』を読みました。
川井リンメイ先生が登場する2つ目の話です。しかも、依頼者が「ひとの心がわかる弁護士」を望んだことから、川井リンメイ先生が推薦されて、ある被疑者(梶井舜)の弁護を引き受けます。何回か面会した後で、川井先生は被疑者から言われます。

「時々来てくれますか?」梶井舜が聞いた。「川井さんと話していると、久しぶりで人間と会ったという気分になれますから」そう言ってやさしい目になって笑った。拘置所では、被収容者は、看守に絶対服従を強いられる。特に、これまで社会的な地位のあった者や精神性の高い者には耐え難い毎日だ。私には、なんとなく梶井舜が、修道院に入るような気持ちでこういう場に自分を置いていると感じられるのだが、それでもやはり我慢できないことは多いだろう。それをごく抑制して彼は言葉にしている。

やはり、普通の弁護人先生とは違います。ラスト近く、川井先生は被害者の14歳の息子(小野亮)に、手書きの手紙を送ります。その手紙は、次の文章で終わります。

亮さんの前で、私は大人ぶっていましたが、実はほんとうに未熟な人間だということがわかりました。亮さんをいろいろ苦しめてしまったことをお詫びします。亮さんは、とてもすばらしいご両親から生まれた、すばらしいお子さんです。今の不幸を乗り越えて、すばらしく成人していかれることを信じています。

これ以上、話の詳しい内容は、あえて書きません。でも、とても悲しい、夫婦、親子、そして男女の話です。題名は、昔のシャンソン歌手が歌った歌からとっています(日本でも、淡谷のり子さん、美輪明宏さん他がカバーしています)。ある筋で、とても有名な歌みたいです。ちなみに、今回の本の出版社は、角川書店です。