長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

本来の「福祉」とは?「障害」とは?

自分では、分かっているつもりでいましたが、はっきりと明快に記した“文”に出会いました。

「福祉」という単語を辞書で引くと、国語辞典には"「公的配慮によって社会の成員が等しく受けることができる安定した生活環境」と書いてあり、英英辞典には「the health,happiness,and fortunes of person or group(人や、人々の健康、幸福、幸運)」と書いてあります。
どこにも「障害者のために」とか「高齢者のために」とは書いていません。
「すべての人が、幸せに生きる」、それが福祉。

ほんのちょっと前までは、障害とは「歩けない」とか「眼が見えない」というように、
機能不全のことを言われていました。でも、今やそれは古い考え方。
「障害」というのは、社会における「生きにくさ」のこと。
(中略)機能不全がなくても、社会の中で行きづらさを感じている人はたくさんいます。

隠されてしまっている個別の「生きにくさ」をどうやって拾い上げ、
どうやって社会全体の問題へと共有化していくか。切り口は「障害者のための」かもしれないけど、
結局、その「生きにくさ」を解消するシステムは、すべての人の生きにくさを解消するためのシステムの整備に繋がっていくんだ、ということなんです。

正確に言えば、この文を書いた“人”に出会い、教えて貰いました、というべきでしょう。
その人、その本とは、海老原宏美さんと海老原けえ子さん著の『まぁ、空気でも吸って』です。
きっかけは『こんな夜更けにバナナかよ』です。原作者のノンフィクションライターの渡辺一史さん最新作『なぜ人と人は支え合うのか』の中で、海老原宏美さんのことを紹介していました。ちなみに、けえ子さんは、宏美さんのお母さんです。

宏美さんは、ライターでも、学者でもありません。ご自身が当時者なんです。1977年(昭和52年)生まれ。わずか1歳半で「脊椎性筋萎縮症」の診断を受け「進行性の難病です。一生歩けません」と宣告されました。3歳までの命と言われたそうです。それが、小中高とも地域の普通校に通って、大学にも進学して卒業しました。その後は親元を出て一人暮らしを始めて、人工呼吸器を着けることになった現在も、障害者の地域での自立生活を支援するNPO法人の理事長として、日々活動をしています。

そんなギリギリの生活だからこそ、自分にとっての優先順位が見えてくるのかも。
何かを切り捨て、何かをつなぎ続けなければならないからこそ、自分にとって大切な活動、
自分にとって大切な人が自然と見えてくる。そういう意味では、ありがたいことだと思います。

宏美さんは、積極的に海外旅行にも電動車椅子に乗って、酸素ボンベと人工呼吸器を持って出掛けます。
国内も47都道府県のうち31都道府県に行ったそうです。完全制覇を目指しているそうです。

自分の価値観こそが一番正しい、なんて小さい生き方じゃなくて、
どこまでも多様性を受け入れられるでっかい人間になるためにも、
もっともっと、旅を通して世界を見ていきたいです。

本の前半は『「自分」を生きるー障害と共に成長してー』と題した宏美さんの文章です。そして、後半が『泣いて、笑って、ありがとう』の題のけえ子さんの手記となっています。その中から

知識より知恵

できないことは、      誰にでもある。
できないことは、      恥ずかしいことではない。
できないことは、      特別なことではない。
できないことは、      勇気をもつことである。
できないから、       支え合える。
できないから、       声を出せる。
できないから、       夢をもてる。
できないから、       知恵が生まれる。
できないことから、     出発。

できないことを「できない」と、言えることのほうが、
自立しているような気がする。