長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

グレートハンガー、生きる意味に飢えた人

今日が封切り初日です。早速『劇場版 バーニング』を観ました。
それほど大きな映画館ではありせんでしたが、なんと当日券は満員売り切れでした。

映画の感想は、ネタバレはしませんので内容には触れません。
言えることは、春樹さんの原作を読んでモヤモヤして、年末の国営放送のドラマを見てモヤモヤして、
さらにもっとモヤモヤしたい人には、どストライクです。モヤモヤが、2倍3倍に膨らみます。

開場する前のロビーでの印象では、ほとんどが連れの居ない“お一人さま鑑賞”でした。
カップルは二組しか見かけませんでしたし、同性の友人二人連れも同じくらいでした。
しかも“お一人さま”の男女比は、8:2で男性が多いように感じました(自分のその一人ですが)。
これは、春樹さんファンの傾向なのでしょうか?(他人には言えず、独りでモヤモヤしたいとか)
まぁスッキリ、愉しいファミリー向けエンターテイメント作品とは、真逆の作品であることは
間違いありません。一般受けもしないと思います(『万引き家族』が受賞するのは分かります)。

ドラマもそうでしたが、映像と音楽が綺麗で、“彼女”役の新人女優さんが、とても魅力的です。
しばらくは、黄昏れ時の彼女の踊り、シルエットが脳裏から離れません。
消えてしまった“喪失感”とともにクセになります。それだからこそ正真正銘の“村上主義者”です。
北朝鮮の対南放送の音が、遠い太鼓の音にさえ聞こえてきました。

“彼”は「自分は一度も涙を流したことがない」と言っていましたが、最後に目から涙が溢れていたように見えました。あの涙は、果たして“悔しさ”か、あるいは“悲しみ”?(なぜか“怒り”は感じませんでした)あえて深読みをすれば、“喜び”や“安堵”さえ想像できます。
そして“彼女”は、グレートハンガーに興味を持っていましたが、“彼女”自身は、現状の生活に十分満足して、あまり多くを求めないリトルハンガーだと思います。むしろ、裕福ですべてを持っている“彼”の方が、グレートハンガーなのかもしれません。だから“ビニールハウスを焼く”必要があるのかも。そして“僕”はどうか等々、いろいろと考えてしまう作品でした。