長介の髭 消えないままの痛み

犬と本と漫画、映画にドラマ、ときどきお出掛け。消えない傷を残して、前に歩む毎日。

ほんとうのさいわい

「カムパネルラ、また僕たち2人きりになったねえ、

 どこまでもどこまでも一緒に行こう。
 僕はもうあのさそりのように ほんとうにみんなのさいわいのためならば
 僕のからだなんか 百ぺん灼いてもかまわない。」

宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』からの一節です。
 
この後、カンパネルラは居なくなり、ジョバンニは独りになります。
そして、元の丘の上で目が覚めます。そして街に戻って、
カンパネルラが、ザネリを助けようとして、川に落ちたことを知ります。
 
この作品は、未完成だと言われていますが、発表されている作品のラストは、
ジョバンニが、意外にも、明るい足取りで力強く、家に帰って行く描写で終わります。
 
ジョバンニは もういろいろなことで胸がいっぱいで
なんにも云えずに 博士の前をはなれて 早くお母さんに牛乳を持って行って
お父さんの帰ることを知らせようと思うと もう一目散に河原を街の方へ走りました。
 
カンパネルラが何処に行ったのか、自分は分かっている。
どこまでもどこまでもカンパネルラと一緒に、生きていくという決意が感じられます。
自分は、独りぼっちではない。
 
佳代ちゃんが言った“私たちが先にあって、そのあとに私がある”にも通じると思いました。そう言えば、多美子さんを助けた後、よしさんが倒れたことで自分を責めた多美子さんに言ったの言葉でしたね。先に逝った人たちが、空の上から、“私たち”を守ってくれている。だから、“私の幸せ”の前に“私たちみんなの幸せ”を願う。
そんなことを、夏休み最後の日に考えました。
 
最後にもう一つ『銀河鉄道の夜』の一節です。
 
「何がしあわせかわからない。
 本当にどんなに辛いことでも、それが正しい道を進む中の出来事なら
 峠の上りも下りもみんな、本当の幸せに近づく一歩一歩になる。」